🚩6/25-7/4 読書期間
『悼む人 上巻』
亡くなった人を忘れない為に…
“その人は誰に愛したか、愛されたか、どんなことで感謝されたことがあったか?”
毎日死者を訪ね旅を続けるこの作品の表紙である主人公静人です。
静人の周りの人間が亡くなったのをきっかけに彼自身が忘れない為に考えた行いです。明らかに怪しいなと思っていましたが、確かに、大切なことではあると感じました。
少しやり過ぎであるとは思っていましたがやはり、あらゆる場所で静人を迷惑に思う人も居ました。
“大切なのは続けることだということです。いろいろなことに柔軟でいないと、続けることができなくなる。”旅の途中で出会った或る人が言ってくれた言葉を胸に旅を続けているそうです。
静人のご家族も静人の行いを理解していてるのですが、上巻ではかなり静人の家族が悲惨なことになっているので、そっちにも気にかけて欲しい所です、
少し内容が重いので、思っている以上に読むのに時間がかかってしまいました。
上巻に引き続き下巻を読みます。
🚩6/18-6/24 読書期間
『紙の月』
角田光代さん
なんともやりきれない作品でした。
主人公は夫と二人で暮らす梨花。
子に恵まれず、パートで銀行員に勤務する。
前半は梨花が身を隠す姿が描かれていました。
何故⁉︎と疑問を抱きながら読み進めていましたが、後半にいくにつれ、成る程なと思うのと同時に梨花の暴走ぶりに呆れる程でした。
お金って人をここまで変えてしまうのか…と恐ろしさを感じました。
“見栄を張る”にも度がすぎるのではと思いました。
だからと言って梨花が悪いのかと聞かれればそうではないのかもしれません。
返済出来る額を借りて、返せる額だと安心して他の物にもお金をかけてしまい、安心したのも束の間で、消費者金融から借り、、
現実でもありそうなことですよね。
自分もここまでは手を出さないかもしれませんが、買い物でついつい高い物を買ってしまった、、ボーナスが入るから生活に支障は無いだろう…と考えてしまうこともあります。
これも上記と似たようなことなのではないのかと他人事ではない恐ろしさを感じました。
怖い…。
梨花のかつて学生友人だった木綿子は倹約家で、ピリピリした生活をしていました。
将来の為、今後困らないように…と。
ですが木綿子の娘が万引きをしてしまうのです。
娘の言い分は欲しいものを買って貰えず、周りの話題についていけなくなる…ということでした。
倹約しすぎても、良くないのですね。
*印象に残った言葉*
・前日をなぞらない為には今日、前の日と違うことをしなければならない。
・自分の親がいくら稼いで、その中のいくらを自分のために使っているのかなんて考えたことはなかった。
→この言葉には凄く共感出来ました。
頼んでもいないのに、外食に連れてくれてったり、家族旅行に行ったり当然のことだと思っていましたが、当然すぎて当然だと思うこともしない思春期の自分にはそれが疎ましく思ってたのは確かなことだと思いました。感謝しなくては…!
・善も悪も矛盾も理不尽もすべてをひっくるめて私という全体なのだ。 〜作中より〜
最後梨花が旅行先どうなってしまったのか謎です。
梨花の元彼である山田の奥さんが梨花のようになってしまいそうなのに山田が気づいてあげられた点がこの作品の唯一の救いでした。
自分のお金の使い方を見直すいいきっかけになれた作品でした。
🚩6/14-6/17 読書期間
『万引き家族』
是枝裕和さん
カンヌ国際映画祭で最高賞を受賞された作品、、ということで気になり購入してしまいました。
🏠
主人公→祥太
祥太の妹→凛
父→治
母→信代
祖母→初江
信代の腹違いの妹→亜紀
ひっそり影で暮らしている6人家族ですが、
実はこの家族かなりの訳ありで実は血が繋がっていないのです。
治と祥太は大家族であるこの家庭で食をつなぐ為に“盗み”を働いています。それが2人が言う“仕事”でした。
当然血が繋がっていないだけあって親も親だなと思ってしまいます。
のらりくらりし過ぎです。
そんなこともあり主人公の祥太は信代のことをお母さんと、治 のことをお父さんと呼べないのです。
登場人物達は過去に虐待などで酷い境遇で育ってきているので、この家族でしか分かり合えない何かがあるんだと思いました。
貧しく、血も繋がっていない赤の他人が集まった家族ですが読んでいてどこか温かいものを感じます。
カップラーメンを作る待ち時間にコロッケを蓋にのせて温めるシーンも微笑ましかったです。
しかし、“仕事”がいつかバレる日は必ず来ます。
それがバレることにより、思い描いていた“家族”というものの感覚がそれぞれ違っていたことに気づくのです。
家族の絆とは一体なんだったのでしょう。
やっぱり所詮赤の他人にすぎなかったのかと…
ですが、自分は絆が失われたことを信じることが出来ず、失った哀しさでなんだか心にぽっかりと穴が空いてしまったような気分でした。
隠し事が無くなり、今後の祥太のことを考えるとこれでよかったのかもと思う展開でしたが、凛の今の境遇を考えると…
最終章で凛があの温かい家庭を思い出し、ビー玉を数えるシーンには胸苦しいものを感じました。
幼い凛ちゃんの叫びが誰かに届けばいいのに…
ただただそれを願うばかりでした。
映画で見たら泣いてしまいそうな作品です。
🚩6/11-6/13 読書期間
『悪人 下巻』
吉田修一さん
上巻に引き続き下巻です。
上巻では増尾が犯人?祐一?え何何⁇
という曖昧な感じで話は終了してしまいましたが、下巻では祐一が捕まるまでの一部始終が描かれています。
佳乃という大事な娘を失った“家族”
犯罪者の親となってしまった祐一の祖母、母である“房枝”
犯罪者に仕向けられた“増尾”
佳乃が殺された後出会い系で出会った“光代”
と、肝心の祐一の心情は一切描かれておらず、祐一を取り巻く他人の心情だけを上手く描いています。最後の最後まで未知の世界に包まれます。
大事に思っていた人に「実は殺人を犯してしまった」などと告白されたら。
人は尋常でいられなくなると思います。
・逃げても逃げても道は追いかけてくる。走っても走っても道はどこかへ繋がっている。 〜作中より〜
ですが、「祐一を守りたい」「捕まるで一緒にいたい」と考えた光代の気持ちになんとなく共感してしまう部分もありました。
それまで、祐一が殺人を犯す理由も思い浮かばなかったからです。
しかしこの考えは最終章で払拭されます。
祐一が突発的に驚きの行動に出るのです。
作品のタイトル“悪人”の意味とは…
これも「怒り」と同じように答えはありません。
悪人は本当の悪人であるのか? 彼女を守るがために悪人になったのか?この二通りの疑問が残り作品は終了します。
人の気持ちって未知だなと…
複雑です。
祐一には罪を償った上で光代と結ばれて欲しいと思うところでしたが…。
私は話の流れから祐一が彼女を守るために嘘をついているのだと信じたかったです。
この作品は読者によって解釈は色々だと思います。
*印象に残った言葉*
・本当の自分は…本当の自分は…、というのが口癖で、三年も働けば思い描いていた本当の自分が、実は本当の自分じゃなかったことにやっと気がつく。あとは自分の人生を投げだして、どうにか見つけた男に、それを丸投げ。丸投げされても男は困る。私の人生どうしてくれる?
それが夫への口癖になり徐々に募る旦那への不満に反比例して、子供への期待だけが膨らんでいく。公園では他の母親と競いあい、いつしか仲良しグループを作っては、誰かの悪口。
自分では気づいていないが、仲間だけで身を寄せ合って、気に入らない誰かの悪口を言っているその姿は、中学、高校、短大とずっと過ごしてきた自分の姿とまるで同じ。
〜作中より〜
こんな人周りにいるいる!と共感したのと同時に⇧こういう大人にはなりたくない、と感じました。
自分も一緒に逃げているような感覚で読んでいたので最後まで非汗が止まりませんでした。
「怒り」、「悪人」も比べられないくらいそれぞれ違う良さがあり素敵な作品でした。
🚩6/4-6/10 読書期間
『悪人 上巻』
吉田修一さん
『怒り』を読んで、とても良かったので、『悪人』も読みたいと思ったのがこの本を読むきっかけとなりました。
上巻保険会社に勤める佳乃が出会い系で出会った男に殺されるというストーリー構成です。
祐一が犯人で犯行があったその同日に佳乃が増尾にも鉢合わせてる⁇え⁇
となり前編は終了します。
『怒り』は犯人の正体が誰だか後編まで分かりませんでしたが、『悪人』は犯人が既に分かっています。下巻はどういう展開になるのか、『悪人』とは…何を意味するのだろうか。とまだまだ疑問が残りモヤモヤしています。
前編を読んでいるとどうしても祐一が犯罪者だとは思えなくなってしまいます。
〜作中より〜
あの夜を境に今寂しくて仕方がない。寂しさ
というのは自分の話を誰かに聞いてもらいたいと切望する気持ちなのかもしれない。
祐一の心情が変化してしまった理由とはなんなんだろうか…
上巻に引き続き下巻を読んでみようと思います。
🚩6/1-6/3 読書期間
「怒り 下巻」
吉田修一さん
上巻に引き続き下巻でした。
八王子の凶悪事件の山神一也は誰なのかが下巻で明らかになります。
指名手配で貼りだされ、あらゆる場所から山神に似た人物を見たと…通報があります。
作品では三つの話で構成されています。
下巻では…
・優馬の家に居候している男、直人。
・洋平の元で働くバイトの男、田代。
この3人が山神なのではないかと周りが疑いを持ち始めます。
この疑いにより、幸せだった周りの生活も一編してしまいます。
真実は…ネタバレになってしまうので書けませんがこの人が山神、なのかと驚かされるのと同時に、なんとも言えないモヤモヤ感が押し寄せてきました。
どうして人は確信もないのに直ぐに疑いを抱いてしまうのか…と思ってしまいました。
人を信じていればこんなことにはならなかったのに、、 信じていたのに、裏切られた…
このことに主人公達は後から気づくのですが、それはもう手遅れで、大切な人をうしなってから事の重大さに気づくのです。
八王子の殺人現場に血で残された“怒”の意味
この意味は最終的には作中では明かされません。そして読者の私も本当の“怒”の意味は分からず終いでした。
私個人の解釈ですが、作品の題名となる“怒り”の意味は、犯人が感じた怒りではなくて、心から信じていた人に裏切られた時…殺せざるをえなかった主人公の怒りと人を信じられなかった主人公の怒り両方の意味が込められているのではないか、、と感じました。
信じるのとは何なのでしょう…。
“信じる”とは簡単に口には出せるけれど、この作品を読み“信じる”という言葉の難しさを感じました。
初めて読んだ作家さんでしたが人間ドラマが面白いのと同時に事の重さに色々と考えさせられました。
“怒り”に続き人気の作品“悪人”も読んでみたいです。
🚩5/28-5/31 読書期間
『怒り 上巻』
吉田修一さん
初読み作家さんです。
「ダヴィンチ」book of year 2016文庫ランキング1位という帯に惹かれ思わず手に取ってしまいました。
八王子で若い夫婦が殺人事件に惨殺され、現場には“怒”という血文字が残されていました。
犯人は山神一也と正体は明らかになっているが行方知らずになっており更に整形、女装、をしており捜査は難航していました。
千葉の港で働く親子。ふらっと東京まで出ていった娘愛子を連れ戻しに行った父の洋平でしたが、その後、洋平の所でバイトで働く田代という真面目な男に愛子は惹かれます。この男の正体は掴めないのでした。
東京の大企業に勤めるゲイである優馬。クラブで踊り、病気の母を見舞いに行く生活を送っていました。ある時温泉施設で直人名乗る男に出会います。兄嫁の友香にも気に入られるのですが、この男の正体も不明なのでした。
夜逃げが当たり前の母と泉は沖縄に行くのでした。泉は辰哉という友人にボートで離島に連れて行ってもらうのですが、そこで田中といういかにもバックパッカーに見える男に出会います。
彼は那覇に時折働きにいくのだと言いますが、ここに居ることは決して誰にも言わないでほしいと泉に口止めをするのでした。彼の正体も不明なのでした。
八王子の殺人事件、正体不明の3人の男、複数の話がどう繋がっていくのか下巻に期待です。