🚩6/11-6/13 読書期間
『悪人 下巻』
吉田修一さん
上巻に引き続き下巻です。
上巻では増尾が犯人?祐一?え何何⁇
という曖昧な感じで話は終了してしまいましたが、下巻では祐一が捕まるまでの一部始終が描かれています。
佳乃という大事な娘を失った“家族”
犯罪者の親となってしまった祐一の祖母、母である“房枝”
犯罪者に仕向けられた“増尾”
佳乃が殺された後出会い系で出会った“光代”
と、肝心の祐一の心情は一切描かれておらず、祐一を取り巻く他人の心情だけを上手く描いています。最後の最後まで未知の世界に包まれます。
大事に思っていた人に「実は殺人を犯してしまった」などと告白されたら。
人は尋常でいられなくなると思います。
・逃げても逃げても道は追いかけてくる。走っても走っても道はどこかへ繋がっている。 〜作中より〜
ですが、「祐一を守りたい」「捕まるで一緒にいたい」と考えた光代の気持ちになんとなく共感してしまう部分もありました。
それまで、祐一が殺人を犯す理由も思い浮かばなかったからです。
しかしこの考えは最終章で払拭されます。
祐一が突発的に驚きの行動に出るのです。
作品のタイトル“悪人”の意味とは…
これも「怒り」と同じように答えはありません。
悪人は本当の悪人であるのか? 彼女を守るがために悪人になったのか?この二通りの疑問が残り作品は終了します。
人の気持ちって未知だなと…
複雑です。
祐一には罪を償った上で光代と結ばれて欲しいと思うところでしたが…。
私は話の流れから祐一が彼女を守るために嘘をついているのだと信じたかったです。
この作品は読者によって解釈は色々だと思います。
*印象に残った言葉*
・本当の自分は…本当の自分は…、というのが口癖で、三年も働けば思い描いていた本当の自分が、実は本当の自分じゃなかったことにやっと気がつく。あとは自分の人生を投げだして、どうにか見つけた男に、それを丸投げ。丸投げされても男は困る。私の人生どうしてくれる?
それが夫への口癖になり徐々に募る旦那への不満に反比例して、子供への期待だけが膨らんでいく。公園では他の母親と競いあい、いつしか仲良しグループを作っては、誰かの悪口。
自分では気づいていないが、仲間だけで身を寄せ合って、気に入らない誰かの悪口を言っているその姿は、中学、高校、短大とずっと過ごしてきた自分の姿とまるで同じ。
〜作中より〜
こんな人周りにいるいる!と共感したのと同時に⇧こういう大人にはなりたくない、と感じました。
自分も一緒に逃げているような感覚で読んでいたので最後まで非汗が止まりませんでした。
「怒り」、「悪人」も比べられないくらいそれぞれ違う良さがあり素敵な作品でした。