*my小説日記*

読書記録

🚩6/18-6/24 読書期間

『紙の月』

角田光代さん

 

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なんともやりきれない作品でした。

 

 

主人公は夫と二人で暮らす梨花

子に恵まれず、パートで銀行員に勤務する。

 

前半は梨花が身を隠す姿が描かれていました。

 

何故⁉︎と疑問を抱きながら読み進めていましたが、後半にいくにつれ、成る程なと思うのと同時に梨花の暴走ぶりに呆れる程でした。

 

お金って人をここまで変えてしまうのか…と恐ろしさを感じました。

 

見栄を張る”にも度がすぎるのではと思いました。

 

だからと言って梨花が悪いのかと聞かれればそうではないのかもしれません。

 

返済出来る額を借りて、返せる額だと安心して他の物にもお金をかけてしまい、安心したのも束の間で、消費者金融から借り、、

現実でもありそうなことですよね。

 

自分もここまでは手を出さないかもしれませんが、買い物でついつい高い物を買ってしまった、、ボーナスが入るから生活に支障は無いだろう…と考えてしまうこともあります。

 

これも上記と似たようなことなのではないのかと他人事ではない恐ろしさを感じました。

 

怖い…。

 

ここでは、梨花梨花の友人の生活の姿も描かれています。

 

梨花のかつて学生友人だった木綿子は倹約家で、ピリピリした生活をしていました。

将来の為、今後困らないように…と。

 

ですが木綿子の娘が万引きをしてしまうのです。

 

娘の言い分は欲しいものを買って貰えず、周りの話題についていけなくなる…ということでした。

 

倹約しすぎても、良くないのですね。 

 

 

 

*印象に残った言葉*

 

・前日をなぞらない為には今日、前の日と違うことをしなければならない。

 

・自分の親がいくら稼いで、その中のいくらを自分のために使っているのかなんて考えたことはなかった。

 

→この言葉には凄く共感出来ました。

 

頼んでもいないのに、外食に連れてくれてったり、家族旅行に行ったり当然のことだと思っていましたが、当然すぎて当然だと思うこともしない思春期の自分にはそれが疎ましく思ってたのは確かなことだと思いました。感謝しなくては…!

 

・善も悪も矛盾も理不尽もすべてをひっくるめて私という全体なのだ。   〜作中より〜

 

最後梨花が旅行先どうなってしまったのか謎です。

 

梨花の元彼である山田の奥さんが梨花のようになってしまいそうなのに山田が気づいてあげられた点がこの作品の唯一の救いでした。

 

自分のお金の使い方を見直すいいきっかけになれた作品でした。

 

🚩6/14-6/17 読書期間

 

万引き家族

是枝裕和さん

 

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カンヌ国際映画祭で最高賞を受賞された作品、、ということで気になり購入してしまいました。

 

🏠

主人公→祥太

祥太の妹→凛

父→治

母→信代

祖母→初江

信代の腹違いの妹→亜紀

 

ひっそり影で暮らしている6人家族ですが、

実はこの家族かなりの訳ありで実は血が繋がっていないのです。

 

治と祥太は大家族であるこの家庭で食をつなぐ為に“盗み”を働いています。それが2人が言う“仕事”でした。

 

当然血が繋がっていないだけあって親も親だなと思ってしまいます。

のらりくらりし過ぎです。


そんなこともあり主人公の祥太は信代のことをお母さんと、治 のことをお父さんと呼べないのです。

 

登場人物達は過去に虐待などで酷い境遇で育ってきているので、この家族でしか分かり合えない何かがあるんだと思いました。

 

貧しく、血も繋がっていない赤の他人が集まった家族ですが読んでいてどこか温かいものを感じます。

 

カップラーメンを作る待ち時間にコロッケを蓋にのせて温めるシーンも微笑ましかったです。

 

しかし、“仕事”がいつかバレる日は必ず来ます。

 

それがバレることにより、思い描いていた“家族”というものの感覚がそれぞれ違っていたことに気づくのです。

 

家族の絆とは一体なんだったのでしょう。

 

やっぱり所詮赤の他人にすぎなかったのかと…

 

ですが、自分は絆が失われたことを信じることが出来ず、失った哀しさでなんだか心にぽっかりと穴が空いてしまったような気分でした。

 

隠し事が無くなり、今後の祥太のことを考えるとこれでよかったのかもと思う展開でしたが、凛の今の境遇を考えると…

 

最終章で凛があの温かい家庭を思い出し、ビー玉を数えるシーンには胸苦しいものを感じました。

 

幼い凛ちゃんの叫びが誰かに届けばいいのに…

ただただそれを願うばかりでした。

 

映画で見たら泣いてしまいそうな作品です。

 

🚩6/11-6/13 読書期間

 

『悪人 下巻』

吉田修一さん

 

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上巻に引き続き下巻です。

 

上巻では増尾が犯人?祐一?え何何⁇

という曖昧な感じで話は終了してしまいましたが、下巻では祐一が捕まるまでの一部始終が描かれています。

 

佳乃という大事な娘を失った“家族”

犯罪者の親となってしまった祐一の祖母、母である“房枝”

犯罪者に仕向けられた“増尾

佳乃が殺された後出会い系で出会った“光代” 

 

と、肝心の祐一の心情は一切描かれておらず、祐一を取り巻く他人の心情だけを上手く描いています。最後の最後まで未知の世界に包まれます。

 

大事に思っていた人に「実は殺人を犯してしまった」などと告白されたら。

 

人は尋常でいられなくなると思います。

 

 

・逃げても逃げても道は追いかけてくる。走っても走っても道はどこかへ繋がっている。                                             〜作中より〜

 

ですが、「祐一を守りたい」「捕まるで一緒にいたい」と考えた光代の気持ちになんとなく共感してしまう部分もありました。

 

それまで、祐一が殺人を犯す理由も思い浮かばなかったからです。

 

しかしこの考えは最終章で払拭されます。

 

祐一が突発的に驚きの行動に出るのです。

 

作品のタイトル“悪人”の意味とは…

 

これも「怒り」と同じように答えはありません。

 

悪人は本当の悪人であるのか? 彼女を守るがために悪人になったのか?この二通りの疑問が残り作品は終了します。

 

人の気持ちって未知だなと…

複雑です。

 


祐一には罪を償った上で光代と結ばれて欲しいと思うところでしたが…。

 

私は話の流れから祐一が彼女を守るために嘘をついているのだと信じたかったです。

 

この作品は読者によって解釈は色々だと思います。

 

 

*印象に残った言葉*

・本当の自分は…本当の自分は…、というのが口癖で、三年も働けば思い描いていた本当の自分が、実は本当の自分じゃなかったことにやっと気がつく。あとは自分の人生を投げだして、どうにか見つけた男に、それを丸投げ。丸投げされても男は困る。私の人生どうしてくれる?

それが夫への口癖になり徐々に募る旦那への不満に反比例して、子供への期待だけが膨らんでいく。公園では他の母親と競いあい、いつしか仲良しグループを作っては、誰かの悪口。

自分では気づいていないが、仲間だけで身を寄せ合って、気に入らない誰かの悪口を言っているその姿は、中学、高校、短大とずっと過ごしてきた自分の姿とまるで同じ。

 〜作中より〜

 

こんな人周りにいるいる!と共感したのと同時に⇧こういう大人にはなりたくない、と感じました。

 

 

自分も一緒に逃げているような感覚で読んでいたので最後まで非汗が止まりませんでした。

 

 

「怒り」、「悪人」も比べられないくらいそれぞれ違う良さがあり素敵な作品でした。

 

🚩6/4-6/10 読書期間

『悪人 上巻』

吉田修一さん

 

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『怒り』を読んで、とても良かったので、『悪人』も読みたいと思ったのがこの本を読むきっかけとなりました。

 

 

上巻保険会社に勤める佳乃が出会い系で出会った男に殺されるというストーリー構成です。

 

祐一が犯人で犯行があったその同日に佳乃が増尾にも鉢合わせてる⁇え⁇

となり前編は終了します。

 

『怒り』は犯人の正体が誰だか後編まで分かりませんでしたが、『悪人』は犯人が既に分かっています。下巻はどういう展開になるのか、『悪人』とは…何を意味するのだろうか。とまだまだ疑問が残りモヤモヤしています。

  

前編を読んでいるとどうしても祐一が犯罪者だとは思えなくなってしまいます。

 

〜作中より〜

あの夜を境に今寂しくて仕方がない。寂しさ

というのは自分の話を誰かに聞いてもらいたいと切望する気持ちなのかもしれない。

 

祐一の心情が変化してしまった理由とはなんなんだろうか…

 

 

 

上巻に引き続き下巻を読んでみようと思います。

🚩6/1-6/3 読書期間

 

「怒り 下巻」

吉田修一さん

 

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上巻に引き続き下巻でした。

 

八王子の凶悪事件の山神一也は誰なのかが下巻で明らかになります。

 

指名手配で貼りだされ、あらゆる場所から山神に似た人物を見たと…通報があります。

 

作品では三つの話で構成されています。

 

下巻では…

 

優馬の家に居候している男、直人。

 

無人島に住むバックパッカーらしき男、田中。

 

・洋平の元で働くバイトの男、田代。

 

この3人が山神なのではないかと周りが疑いを持ち始めます。

 

この疑いにより、幸せだった周りの生活も一編してしまいます。

 

真実は…ネタバレになってしまうので書けませんがこの人が山神、なのかと驚かされるのと同時に、なんとも言えないモヤモヤ感が押し寄せてきました。

 

どうして人は確信もないのに直ぐに疑いを抱いてしまうのか…と思ってしまいました。

 

人を信じていればこんなことにはならなかったのに、、 信じていたのに、裏切られた…

 

このことに主人公達は後から気づくのですが、それはもう手遅れで、大切な人をうしなってから事の重大さに気づくのです。

 

八王子の殺人現場に血で残された“怒”の意味

この意味は最終的には作中では明かされません。そして読者の私も本当の“怒”の意味は分からず終いでした。

 

私個人の解釈ですが、作品の題名となる“怒り”の意味は、犯人が感じた怒りではなくて、心から信じていた人に裏切られた時…殺せざるをえなかった主人公の怒りと人を信じられなかった主人公の怒り両方の意味が込められているのではないか、、と感じました。

 

信じるのとは何なのでしょう…。

“信じる”とは簡単に口には出せるけれど、この作品を読み“信じる”という言葉の難しさを感じました。

 

初めて読んだ作家さんでしたが人間ドラマが面白いのと同時に事の重さに色々と考えさせられました。

 

“怒り”に続き人気の作品“悪人”も読んでみたいです。

 

 

 

 

 

🚩5/28-5/31 読書期間

 

『怒り 上巻』

 

吉田修一さん

 

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初読み作家さんです。

 

 

ダヴィンチ」book of year 2016文庫ランキング1位という帯に惹かれ思わず手に取ってしまいました。

 

八王子で若い夫婦が殺人事件に惨殺され、現場には“怒”という血文字が残されていました。

 

 

犯人は山神一也と正体は明らかになっているが行方知らずになっており更に整形、女装、をしており捜査は難航していました。

 

 

 

千葉の港で働く親子。ふらっと東京まで出ていった娘愛子を連れ戻しに行った父の洋平でしたが、その後、洋平の所でバイトで働く田代という真面目な男に愛子は惹かれます。この男の正体は掴めないのでした。

 

 

東京の大企業に勤めるゲイである優馬。クラブで踊り、病気の母を見舞いに行く生活を送っていました。ある時温泉施設で直人名乗る男に出会います。兄嫁の友香にも気に入られるのですが、この男の正体も不明なのでした。

 

 

夜逃げが当たり前の母と泉は沖縄に行くのでした。泉は辰哉という友人にボートで離島に連れて行ってもらうのですが、そこで田中といういかにもバックパッカーに見える男に出会います。

 

彼は那覇に時折働きにいくのだと言いますが、ここに居ることは決して誰にも言わないでほしいと泉に口止めをするのでした。彼の正体も不明なのでした。

 

八王子の殺人事件、正体不明の3人の男、複数の話がどう繋がっていくのか下巻に期待です。

 

 

 

 

 

 

🚩5/22-5/27 読書期間

 

『未来』

湊かなえさん

 

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いやミスとも言われる湊さんですが、

私はそんな湊さんの作品が大好きです。

 

 

今回の作品は卒アルを彷彿させ、思わず表紙買いといった所でしょうか。

 

湊さんは『豆の上で眠る』という作品を読んで衝撃を受け嵌ってしまいました。

 

今回の作品はどちらかというと前向きな作品かもしれません。

 

ですが、相変わらず後味は悪いです笑

 

主人公章子は未来30歳の自分から一通の手紙が届きます。

 

未来の自分から届いた手紙、イタズラなのではないか、と疑いを抱きますが自分の秘密を知っており、ドリームランド30周年記念の栞も送られてきていました。

 

母親は文乃、子は章子2人合わせて文章という単語になるのだと、父親が名付けたそうです。良い名前ですね。

父は小説を書くのが好きでした。

 

ですが、父親は早くに病気で亡くなってしまいます。

 

母親の性格は難ありで、小説では人形と人と例えてますが、日常のことはほとんど父親がこなしていました。父親の死後、章子は父親のありがたみを知ります。

 

ところがある日章子は父と母の知られず過去を知ってしまうのでした。

 

母親は犯罪者なのか…?

犯罪者だとしたら父親は何故仕事を放棄してまで母親を守る為に家をでたのか…?です。

 

30年後から届いた手紙を貰った人はもう一人いました。亜里沙です。

 

亜里沙は弟を失いました。

 

弟の死因は自殺でした。

亜里沙の母親も病死で他界します。

 

父親は暴力を振るう人で、母親の死後は弟に手を出していました。

 

病室で家族で「ハイテンション!」と言いながらシャインマスカットを食べるシーンがあります。この時母親は病気でかなり弱っていました。父親は面会に来る前に弟と亜里沙に「母親の前では悲しい顔をするな」と言い聞かせていました。

 

弟が自殺する前にも同じシーンがありました。

歳の数だけシャインマスカットを食べようと亜里沙が提案するのですが、そこで二人は母親と食べたシャインマスカットの味を思い出すのです。

 

苦しい生活を送っていた二人でしたが久々笑顔が見られます。このシーンには思わず涙してしまいます。

 

学校では章子、亜里沙、共に過酷な生活を強いられた同士気があったのか二人は友達になります。

 

因みに章子は学校でいじめを受け、亜里沙不登校でした。

 

最終章では二人が未来にどう向かっていくのか気になっていく所です。

 

章子→亜里沙→章子亜里沙の担任の先生→章子の父親の過去→章子と亜里沙

 

とストーリーは展開していきます。

 

何故担任の先生が?と思いましたが、これにもちゃんとした理由があるのです。

途中で辞めてしまった先生なのですがしっかりと先生以上の役割を果たしていたことが分かりました。

 

 

*印象に残った言葉*

 

・言葉には人をなぐさめる力がある。心を強くする力がある。勇気を与える力がある。いやし、励まし、愛を伝えることも出来る。だけど口から出た言葉は目に見えない。すぐに消えてしまう。耳の奥に、頭のしんに、焼きつけておきたい言葉でさえも、時がすぎれば曖昧なすがたに変わってしまう。だからこそ人は大切なことは書いて残す、言葉を形あるものにするために永遠のものにするために、それが「文章」です。〜作中より〜

 

・だれと出会うために、何をするために、などと悩んだり色々な方法を試しながら人生は自分自身で切り開いていくものです。なのに先の事が分かってしまったら、誰かに決められた人生を歩んでいるだけなのだと思い込んでしまったら努力をしない人間になってしまうかもしれません。もしくはわざと反発しようとするかもしれません。未来など知らない方がいいのです。〜作中より〜

 

・人のこころは目に見えないけれどとてもやわらかいものだとパパは思う。だから美味しいものを食べたり、綺麗な星空を見たりといった日常生活のささやかな出来事も受け止めて、包みこみ、幸せを感じることが出来る。それとは逆にやわらかいから傷つきやすくもある。だけど傷ついた心は幸せな事で修理することが出来る〜作中より〜

 

・本を読むこと、文章を書くことは、決して今のさびしさを紛らわすための行いだけではなく、あなたを未来のあなた、つまり私に導いてくれる大切な役割を果たすものになるはずです。〜作中より〜

 

・一人で抱えちゃいけない。分担すればいい自分にとっては重い荷物でも、当事者以外にとってはそれ程重くないかもしれないのだから、分ける相手がいるのなら互いの荷物を交換し合ってもいい〜作中より〜

 

・世の中には正論があふれてるのに、イジメにしろ貧困問題にしろ、何十年も前から続く問題が解決されないのは、本音を語らない人が多いからではないか。問題を解決しようという気はなく、自分に流れてくる波を堰止めるために都合の良い言葉で堤防をつくる。もしくはその他大勢に流れようとする。幸せかと訊かれれば、さほど大きな悩みを抱えていないのに不幸だと答えておく。息苦しい世の中だと嘆いてみせる。生きづらいと不平をもらす。そうすることにより、本当に問題を抱えている人たちが埋もれてしまうことなど気付こうともしないで。

〜作中より〜

 

湊さんの「未来」には前向きになれるような言葉も沢山詰まっていました。

 

亜里沙、章子二人で「ハイテンション」と叫ぶシーンがあります。このハイテンションには二人の抱えた問題はまだ解決には至らないけれど、これから起こる未来に向かって逃げずに進んでいこう、その先には笑顔が待っているからという私なりに解釈をしました。

 

豆の上で眠ると同様に良かった作品でした。