*my小説日記*

読書記録

🚩9/8-9/16 読書期間

 

『ロストケア』

葉真中顕さん

 

f:id:readstory:20180916205204j:image

 

初読み作家さんです。

 

日本社会における問題を考えさせられるミステリーでした。

 

テーマは“超高齢化社会

生産年齢人口が減り老年人口が増えていっている世の中。その中で国民年金の未滞納者が約4割であり、40年後には現役世代が高齢化一人を支える、“肩車社会”がやってくるであろうと言われています。

 

それに因んでいるこの作品、介護保険制度で要介護が認定された高齢社が相次ぎ急死します。

 

警察は被害者が抗った様子も見られず、司法解剖にもお金がかかる為、老死としますが、実は人為的の疑いも!

 

黙示されている。

分かっていた。分かっている。分かっているのさに。人は立ちすくむばかりだ。正しい者は一人もいない。楽園ではないこの世界に生きる者は一人残らず罪人だ。〜作中より〜

 

未来に起こりうる厄災は何年も前から予測出来ていた問題でしたが、自分も含め人はその問題を直視せずに…と今に至ります。

 

たとえ家族であっても介護をする人にとっての負担は測りきれない程大きいものだと、感じました。

 

「マタイによる複音書」

求めなさい、そうすれば与えられる。探しなさいそうすれば見つかる。門をたたきなさいそうすれば開かれる。誰でも求めるものは受け、探す者は見つけ、門をたたくものは開かれる。あなたがたの誰かがパンを欲しがる子供に、石を与えるだろうか。魚を欲しがるのに、蛇を与えるだろうか。このようにあなたがたは悪い者でありながらも、自分の子供には良い物を与えることを知っている。まして、あなたがたの天の父は、求めるものに良いものを下さるに違いない。だから人にして欲しいものは何でもあなたがたも人にしなさい。これこそ律法と預言者である。〜イエスの言葉より〜

 

このイエスの言葉が作中に何度も見られます。

この言葉と、主人公の境遇がこの作品のテーマとなるロストケアに繋がります。

 

成る程なと、納得してはいけないことですが、納得してしまう自分もいて、深刻化している問題ですが結局何も出来ない自分もいて、、。

 

殺人を犯した主人公が罪人だと考えるのが普通ですが、逆に行動しない自分が罪人なのではないか考えてしまったりと複雑な気分に陥った作品でした。