🚩10/6-10/8 読書期間
『影法師』
百田尚樹さん
壬生義士伝に続き、また時代小説です。
百田尚樹さんの作品はどの作品を読んでもジーンと来てしまいます。
特にフォルトナの瞳とプリズムの切なさはどの作品にも負けないと思います。
今回百田さんの作品で時代小説を読むのは初めてでした。
時代は江戸時代、茅島藩の下士に生まれた勘一郎が主人公です。
父は釣りに行った帰りに勘一郎が上士に逆らったことを父が庇ったことにより事切れます。
その時に出会ったのが彦四郎でした。
彦四郎は剣が誰よりも強く才能に恵まれていました。
下士の勘一郎は虐めにあっていましたが、彦四郎には気を許せるのでした。
彦四郎の影響で藩校でも気を許す友達が出来ます。
数年後、勘一郎は実力が認められ上士になるのですが、一方の彦四郎は貧しくひっそりと暮らさなければならない境遇に陥ります。
何故藩校で優れていた彦四郎がこのような生活を余儀なくされなければならなくなったのか?
その理由を勘一郎が知ったとき既に時は遅く、
自分の不甲斐なさを感じるのでした。
他人に幸せになってもらいたいの思いで、自分よりも友情を取る彦四郎の思いに胸が熱くなりました。
彦四郎が友情を取らず違う生き方をしていたらと考えると、この物語の立場はどうなってしたのだろうと考えると、なんというか、おぞましさを感じてしまいました。
2作品目の時代小説ですが、武士の生き方というのが、不思議で、なかなか分からないでいる自分でした。笑
🚩10/1-10/5 読書期間
『壬生義士伝 下巻』
浅田次郎さん
上巻に引き続き下巻を読んでいました。
新撰組の隊員であった吉村貫一郎の繋がりがあった人達から浮かび上がる人物像。
国元にお金を送る為に、自分は何ひとつ贅沢はしない。奥さん、息子さん、娘さんの為を思えば人を殺すことさえ躊躇しない。
ですが、35歳という若さで亡くなってしまいます。彼は鳥伏見の戦いで心身共にボロボロとなりかつての親友大野次郎右衛門を訪ねるのですが、彼は貫一郎に切腹を命じます。
戦いでボロボロになり切腹という境遇の中でも思い出されるのは、彼の家族でした。
息子の吉村嘉一郎は「脱藩した父から送られた銭で育った…」と自分を責めている風に書かれていますが、本心は全く違うものでした。
会えなくても、誰よりも家族を思う貫一郎でしたが、彼の思いは息子、娘たちにも届き、父親の愛情を感じるのでした。
今まで時代ものを避けてきました。
この良さをどう伝えれば良いのかわからず、文章に上手くかくことが出来ません。
が!!これは、人生をガラリと変えてしまう程の作品でした。
全国の父親達に是非読んでほしいです。
おもさげながんす。
🚩9/25-9/30 読書期間
『壬生義心伝 上巻』
浅田次郎さん
人生初の時代小説ですが、浅田次郎さんの作品は2作品目です。
以前に天国までの100マイルを読みました。病気の母を救う為に奔走する息子のストーリーで感動物でした。
今回の作品も感動物の予感⁉︎
主人公は吉村貫一郎。
彼は知的であり、何より強い。
昔で言う国の為に死ぬのではない、死にたくないから人を切るという変わった思考の持ち主でした。
人を切って貰ったお金を決して自分に使うこともなく故郷にいる家族に送るという。家族思いの隊士でもありました。
子供達にも慕われていたのですが、同じ新撰組の中でも恨む人も居たみたいです。
主人公の人物像を知る知人が当時のことを訥々と語ることにより吉村貫一郎という人柄を明かしていくのですが、まだ上巻ではハッキリとした人物像が分かりません。
特に印象的なシーンは服部武雄という御陵衛士(ごりょうえじ)がいました。かつて吉村と仲の良かった人を吉村自身が刺殺するシーンと新撰組の古株である斎藤一が機嫌を損ね、吉村に戦いを挑み吉村が見事な剣さばきを見せた所でした。銭こさえ貰えれば仲間を犠牲にしても良いという思考は中々凄い者です。
鳥羽伏見の戦いで新撰組がボロボロになり消滅された戦いがありましたが、仲間が負けを悟り引き返していく中で吉村だけは敵に立ち向かっていくシーンはあまりの勇ましさに驚かされました。
まるで時代劇を見ているようです。
副長助勤 斎藤一
の実在されたという人物も登場します。
新選組(しんせんぐみ)は、江戸時代末期(幕末)に、京都において反幕府勢力を取り締まる警察活動に従事したのち、旧幕府軍の一員として戊辰戦争を戦った武装組織である
ウィキペディアより〜
引き続き下巻を読みます。
🚩9/17-9/24 読書期間
『翔ぶ少女』
原田マハさん
表紙とは裏腹に悲しいお話
ニケの両親はパン屋を営んでいたが、地震で下敷きになってしまい、両親を失ってしまいます。
主人公ニケも地震により足を負傷し普通に歩けなくなってしまいました。
残されたニケと妹のサンク兄のイツキは心療内科の先生であるゼロ先生に引き取られます。
ゼロ先生は地震で逃げ後れそうになったニケ達を救ってくれた命の恩人でもあったのです。
そんなゼロ先生とニケ達は被災した人たちの力になれればと仮設住宅を周ります。
周りの笑顔にニケは勇気づけられます。
ニケとは…勝利の女神という意味でギリシャ神話に出てくるみたいです。
ニケを救ったゼロ先生ですが、ゼロ先生にも
地震で失った物が…
そしてニケにとって家族のようなゼロ先生が危険な状態に…。
そこで勝利の女神ニケが奇跡を起こします!
その活躍ぶりに目が離せません。
奇跡は夢だったのか、現実だったのか分からない所ですが笑
地震に遭い両親を失った、少女が前向きに生きていく姿に勇気を貰える作品です。
🚩9/8-9/16 読書期間
『ロストケア』
葉真中顕さん
初読み作家さんです。
日本社会における問題を考えさせられるミステリーでした。
テーマは“超高齢化社会”
生産年齢人口が減り老年人口が増えていっている世の中。その中で国民年金の未滞納者が約4割であり、40年後には現役世代が高齢化一人を支える、“肩車社会”がやってくるであろうと言われています。
それに因んでいるこの作品、介護保険制度で要介護が認定された高齢社が相次ぎ急死します。
警察は被害者が抗った様子も見られず、司法解剖にもお金がかかる為、老死としますが、実は人為的の疑いも!
黙示されている。
分かっていた。分かっている。分かっているのさに。人は立ちすくむばかりだ。正しい者は一人もいない。楽園ではないこの世界に生きる者は一人残らず罪人だ。〜作中より〜
未来に起こりうる厄災は何年も前から予測出来ていた問題でしたが、自分も含め人はその問題を直視せずに…と今に至ります。
たとえ家族であっても介護をする人にとっての負担は測りきれない程大きいものだと、感じました。
「マタイによる複音書」
求めなさい、そうすれば与えられる。探しなさいそうすれば見つかる。門をたたきなさいそうすれば開かれる。誰でも求めるものは受け、探す者は見つけ、門をたたくものは開かれる。あなたがたの誰かがパンを欲しがる子供に、石を与えるだろうか。魚を欲しがるのに、蛇を与えるだろうか。このようにあなたがたは悪い者でありながらも、自分の子供には良い物を与えることを知っている。まして、あなたがたの天の父は、求めるものに良いものを下さるに違いない。だから人にして欲しいものは何でもあなたがたも人にしなさい。これこそ律法と預言者である。〜イエスの言葉より〜
このイエスの言葉が作中に何度も見られます。
この言葉と、主人公の境遇がこの作品のテーマとなるロストケアに繋がります。
成る程なと、納得してはいけないことですが、納得してしまう自分もいて、深刻化している問題ですが結局何も出来ない自分もいて、、。
殺人を犯した主人公が罪人だと考えるのが普通ですが、逆に行動しない自分が罪人なのではないか考えてしまったりと複雑な気分に陥った作品でした。
🚩9/2-9/7 読書期間
『水やりはいつも深夜だけど』
窪美澄さん
初めて読む作家さんでした。
表紙の可愛さに惹かれと言いたい所ですが、
中身は人間の生きていく上での生々しさが描かれています。
どちらかと言えば婚約者が読むべき話なのかもしれませんが、そんなこともありませんでした。
結婚生活を送る上で、女性も男性も色々と不満が生まれることもあるでしょう。
その生活の中で口には出せませんが思っていること、不満、不安などが上手く描かれています。
ああ、きっと自分もいつか結婚する時がくるとしたらこんな気持ちにもなるのか…という思いで読み進めました。
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人が食べ、寝て、生活することにどれだけの時間と手間が必要か?
食べれば汚れた食器が出る。水回りは放っておけば汚れる。洗って干した洗濯物は、誰かが箪笥にしまわないといつまでも部屋の隅に重なったままだ。
そういう目に見えない仕事に気づいたのだ。
〜作中より〜
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普段当たり前のことだと思っていることが、当たり前でなくなった時に初めてことの重大さに気づくのだと感じました。
この作品は6つの短編集になっているのですが、どの作品もジーンと来ます。
主人公1人1人が何か問題を抱えていて誰にも話せず、まるで、読者に語りかけてくるようで、、
ああきっと誰もがこのような問題に直面しているんだなと。
それに窪さんの文章がとても綺麗で。
不思議と1人じゃないんだって、勇気づけてくれる作品でした。
女性にオススメですが、サボテンの咆哮は男性の方にもオススメできると思います。
窪さんの文章の美しさに圧倒されたのと、初めて読んだ形態の作品で他の作品も読んでみたくなりました。
🚩8/26-9/1読書期間
『嫌われ松子の一生 下巻』
山田宗樹さん
上巻に続いて下巻です。
上巻に引き続き、伯母にあたる松子を笙が調べていきます。国立大を出て、教師までなり優秀だった松子と笙が調べいく中で明らかになっていく松子の姿はまるで別人のようでした。
松子の教え子であり、数年後に松子のパートナーとなった龍に笙は会います。龍は松子の殺人容疑で警察に追われていたのですが、彼もまた松子と同じような境遇の人間であることが分かります。
ですが、松子とは絶縁してしまっていたのです。
松子は誰に殺されたのか?これが一番疑問になる所ですが、分かった所で「ええ?」という感じでした。
誰が犯人なのかというよりも、会ったこともない、笙が伯母である松子がどういった人生を歩んで来たのかを探り、笙自身が成長していくストーリーだと感じました。
印象に残った言葉を紹介します。
*「神は愛である」
許せないものを許すそれが、神の愛なのです。
それが出来るのは神様だけです。あなたの心が神様の心で満たされたとしたら、神様のその愛を今度は他の人に分けてあげて下さい。
あなたにとって許されざる人間を神様の力で許して下さい。どんな時でもあなたは一人でない、いつも神様があなたを見守って下さいます。神様を信じて下さい。神様にとって価値のない人間なんていません。すべての人が尊いのです。*
〜作中より〜
時間が経てば老いていくし、“いつか自分も必ず死ぬ。時間は限られていて、その限られた時間の中でどう向き合っていくか”を松子から考えさせられる作品でした。
夢には捨て時がある。“夢を捨てられた人は初めて大人になれる”。という文章があるようですが、やりたいことは今のうちにやっておくべきだと思いました。
自分も明日死ぬかもしれない。後悔しない人生を送る為に1分1秒を大切にしていきたいです。