🚩4/21-4/25 読書期間
『邪魔 下巻』
奥田英朗さん
上巻に続いての下巻です。
平凡だった生活が崩れていきます。
こんなはずじゃなかった。いつから歯車が狂ってしまったのだろうと
夫が放火事件の犯人だと疑われた奥さん、と。その夫を追う、奥さんと子供を失っている刑事さん。
後半からはこの二人の暴走が止まらず、息をつく暇もない程で…。
義母の話が出てきますが途中で佐伯刑事からとの会話で、?となりますが。
この会話が分かった瞬間は唖然としてしまいました。
まさか“精神安定剤”が伏線になっているとは。
笑
結局というと主人公2人は、タイトルから分かるように誰からも邪魔とされてしまったんだなと。
奥さんの心境
「いやになった。今日がはじまることも、明日があることも」
〜作中より。
悩みを抱えきれず、常軌を逸した行動をしてしまったという所ですかね。
個人的な意見ですが、最後に奥さんが、とった行動は自分勝手ではないかと、、
許せない部分もありました。
一つなにかが欠陥すると組織というものから簡単に外されてしまう。
人間関係って複雑だなと改めて考えさせられました。
*印象に残っている言葉*
・これまで自分の得にならないことは何ひとつやろうとしなかった。面倒なことはすべて関わりを避けてきた。…戦うことは怖くない。戦わないからいつまでたっても臆病なのだ。
作中より〜
上巻、下巻も閉塞感がありどこか報われないものがある作品でした。
“平凡”というのが一番幸せなんだなとおもいました。
🚩4/20-4/22 読書期間
『邪魔 上巻』
奥田英朗さん
奥田英朗さん、去年初読みだったのですが、見事に嵌りました。
去年衝動買いしてずっと積読になっていた作品です。
まだ上巻なので、ちゃんとは感想は言えませんが、上巻は平凡の生活をしていた及川家でしたが放火事件に巻きこまれ、なんとその犯人が及川家の旦那さん茂則さんが疑われるというもの。
奥さんの恭子さんはスーパーのパートさんをしていて、ガーデニングを始めましたが旦那さんが放火犯として疑われると分かってからなんだか、様子がおかしいです。職場でもパートの規定を改めようと、動き始めたりと…。
因みにこの捜査をしている九野さんという刑事さんが登場するのですが、この人も奥さんを無くし、高校生の少年に喧嘩に巻きこまれ、、、手を出してしまった九野さんは上司から退職届けを書かざるを得ないという複雑な状況に陥ってます。
犯人は旦那さんの茂則さんなのではないか?と疑われたまま、上巻は終了します。
なので何が何なのかまだ何も分からない状態です。
流石奥田さん。下巻への導き方が上手いです。
確かに、茂則さんは怪しいですが、上巻では怪しいこと以外に何をやったかさえも明らかになっていないので下巻で全てが明かされるのが楽しみです。
奥田さんのイン・ザ・プールなどの伊良部先生シリーズは腹を抱える程に笑える作品でしたが、この『邪魔』という作品は『最悪』という作品に似ているような感じがします
後半にストーリーが全て繋がる予感がします。
*印象に残った言葉*
・人間て足りなければ足りないことに悩んで、あればあるで失ったらどうしようって悩むんだよ。
・典型的な素人の反応とは、心の準備をしていても予期せぬ箇所を突かれるとたちまち崩れてしまう。
・長いものには巻かれろ
権力や勢力が強い者には、いがみ合ったりせずに従った方がいい
・触らぬ神に祟りなし
(さわらぬかみにたたりなし)
余計なことに関わらなければ
酷い目に遭うこともないというもの。
下巻も早速読んでみたいと思います。
🚩4/16-4/19 読書期間
『炎の塔』
五十嵐貴久さん
五十嵐さんはリカシリーズを読んでから嵌りました。とは言いながらもまだ5作品目ではありますが…。
炎の塔は前から気になっていたのですが、ハードカバーだったので中々手が出なかったのですが、文庫化されたので、発売日早々に本屋さんに直行しました。
いやー。手に汗を握るような小説を久々に読んだ気がします。それくらいハラハラドキドキでした。
映画「タワーインフェルノ」の影響を受けて描いたそうなのですが、そもそもその映画が流行っている時代にはまだ生まれてませんでしたので、この映画は全く知りません、、。
主人公は夏美という女性の消防士さんです。
銀座では 高さ450mを誇る日本一のタワーファルコンタワーがオープンします。
そこでとんでも無いアクシデントが…
なんとこの日本一のタワーで大火災が起きるのです。
ファルコンタワーは100階建てになっており、
しかも、その最上階の100階には800人もの人が取り残されていました。
オープン初日なので、想像はつきます。
気になるこのファルコンタワーの責任者で鷹岡という人が登場するのですが、まあこの人にはイライラさせられましたね。
先ず第一にお客様のことを考えるのが普通ですが、自分のことばかりしか考えられない責任者で、気にくわないことがあるとすぐ馘にするという最悪な責任者でした。
このファルコンタワーでの火災も事前に異常にセンサーが稼働しており、責任者に報告が行っていたのですが、最先端の技術だからを理由に、目を背けていたのです…。
恐ろしいです、、、
文中にあった印象に残った言葉です。
道路を歩いていても、車は突っ込んでくるかもしれない。家に閉じこもっていても地震で崩れるかもしれない。可能性の話を言い出せばきりが無いというのはその通りだが、その考えが危険なのではないだろうか。
彼らはタワーを信頼し自分たちの身には何も起きない。自分たちの運命を信じている。
絶対ではない、どのような災害も時と場所を選ばない。いつどこで起きるのかは誰にも予測不可能なのだ。と
確かに、東北大震災もそうでしたが、誰も予測することは出来ませんでした。
出来ることと言えば“もしも”の時に備えて準備するぐらいではないかと感じます。
が…。
このファルコンタワー。
防災設備が備えつけてありましたが、あらゆる設備が故障し、なんとプール室には大量の塩酸が、、、
なんとなく嫌な感じはしていたのですが、こうくるとは思いませんでした。
ネタバレなので書けませんが。
消防士の夏美はどこまでひとを救うことが出来るのか、そして、夏美本人は命を落とすことなくタワーから脱出することが出来るのか。
ここのファルコンタワーには、恋人や老人夫婦、親子連れ、芸能人など、様々な人たちが訪れており、それぞれの物語が繰り広げられています。
その中でも老夫婦の話に思わず涙してしまいそうでした。
FLAM3からの後半にかけて目が離せなくなります。
こんなに臨場感溢れる素晴らしい作品を書いて下さった五十嵐さんに☆5つあげたいです。
🚩4/10-4/15 読書期間
『犯罪者 下巻』
太田愛さん
上巻に引き続き下巻も迷わず購入してしまいました。
上下巻で約900頁もあった中あっと言う間に、読み終えてしまいました。
通り魔殺人事件から繋がる、食品会社の闇。
ベビーフードのサンプル一つでなんでこんなに多くの人が犠牲にならなきゃいけないのか…と。←色々な意味で
下巻は凄惨なシーンが多くて、思わず目を塞ぎたくなってしまう場面もありました。
そして上巻に引き続き目が離せない主人公3人組。このコンビの行動に何度ハラハラさせられただろうか、、今回も読者の期待を裏切らない素敵なコンビでした。
それにしても、滝川は本当に恐ろしい人で人間性を疑いました。この人にどんだけ振り回されたか。
個人的に一番苦しんだのは真崎さんと中迫さんだと思いました。
中迫さんはタイタスという組織の中で真実を知ってしまったし、真崎さんは目を離した隙に息子を失ってしまった。
この2人の立場にたって考えたら、真実を誰かに打ち明けるのは当たり前のことだと思うし、その打ち明けた相手に裏切られたらと思うと。
しかもその裏切った相手は子も奥さんも失いどんなに辛い思いをしたか、、
他人の子まで考える余裕が出来るのは余程の決心が必要なのではと、、
二人の心境を考えたら読んでいるのが辛かったです。
タイタスフーズのサンプルを口にした子供とその子供たちを支える親たちの気持ちを考えたら
絶対に許せないことだと思います。
中迫さんがいてくれて良かった。
*印象に残った言葉
・勝負に負けた時どうすべきか知っていた。負けた真実を受けとめ、次に、これから自分に出来る最善のことを考え、それを実行する。
・運の恵まれない人間というのはたいてい自分の気づいていないところで何か原因をつくっているものだ。
・出来上がった組織の中では生きづらい。かといって一人で胸張って生きていけるような何かがあるわけではない。そういう自分達でも出来ることはある。
・咀嚼するという行為は脳に酸素を送り血流が良くなるらしい。
・生きてさえいれば人は前進出来る。
太田愛さんの幻夏、犯罪者を読みましたが、
3作目の天上の葦も早速気になってしまっています。
私が読んだ2作は今起きてる出来事を描いてるそうですが、なんと、天上の葦はこれから起きる出来事を描いてるそうです。
犯罪が真ん中にあるストーリーを描いた犯罪者。様々な因果関係が絡みあって出来たストーリーになっており、何より長さを感じさせない。
脚本家さんだけあって一人一人が、繊細に表現されていて、今にも映像のように浮かび上がってきそうな作品でした。
余韻に浸っており暫くは抜け出せなそうです。
🚩4/7-4/9 読書期間
『おまじない』
西加奈子さん
西加奈子さんはどちらかというとあまり読まない方でした、、
西さんは長編のイメージが強かったので、
短編と聞いて思わず購入してしまいました。
8編あるのですが、、
どれもジーンと来てしまいました。
まさに"傑作"ですね。
1番印象に残ったのは"孫係"でした。
この短編集はすべて女の子が主人公になっているのですが、孫係に出てくる主人公の女の子すみれちゃんというのですが、共感出来る部分が多くて、思わず自分と重ね合わせてしまう程でした。1人になりたい時ってあるよねって。
言葉の力って凄いなって、、
冷え切った心をポカポカにしてくれるような魔法の言葉と自分を受け入れてくれるような素敵な主人公たちに出会えました。
主人公は皆なんらかの孤独をかかえてて、
口には出せないけれどそれが凄く共感出来て、
1人じゃないんだって、そうだよね、頑張ろうって気持ちになれました。
*印象的な言葉〜作中より
☆孫係
・係だと思ったらなんだって出来るのです。
・大抵はその場にあった自分らしくなっていくのです。
・私たちのすべてが自分の意志で動くわけではないのです。何か大きなものに動かされているのです。それを社会というのかもしれません。ゆだねられることはゆだねましょう。私たちはこの世界で与えられた係なのだから。
・皆根はいい子だそれをいかに態度にあらわせるかだ。
・正直なことと優しいことは別なのだ。
・悪態をつくのは限られた人だけです。
本当に信じられる人だけです。インターネットに書きこむなんてもってのほかそれは本当に卑怯なことです。とにかく本人に目にふれる、耳に入る可能性があることは絶対にすべきでない。
・得をしようと思って係につくのはいけません。あくまで思いやりの範囲でやるのです。
その人が間違ってると思ったら、そしてそれを言うことがその人のためになるのなら言わなければならないし、相手を傷つける覚悟を持って対峙しなければならない。その人が間違っていないとき、ただ合わないとか役割的にそうせざるをえないんだなあと分かる時はその人の望む自分でいる努力をするのです。
・いい子でいようとすることはとても偉いことなのです。それは涙ぐましい努力だし、いい子のふりではなく本当にいい子だから出来ることなのです。
☆オーロラ
・オーロラはいつも生まれ続けているのだ。戻ってくるのではない。戻って来るのはあなただから。
☆マタニティ
・自分が弱い人間だなんてはっきり自覚したら強がっていた時より生きやすくなったのです。自分の弱さを認めたら逆に強くなれたのです。
・へいへいという挨拶はフィンランド語の挨拶であり、より親密になるともいもいと言うそうだ。
・誰かが誰かを祝福する時どんな含意があろうとも『おめでとう』というその五文字の発するその美しさは、独立してそこにある。何も汚されないその言葉のもつ美しさは絶対に消えないし汚されないはずだ。
☆おまじない
・何にも染まったらあかん、普通が一番や普通であり目立たんようにしとったらあかんものはつかへんからな、
・まじないや縁起なんてな自分で決めるもんなん。だってな自分が幸せになるためにあるもんやろ?それに囚われりなんておかしいやんか
・ヨウヨウオンゴーオマモリヨはようようおなごをお守り下さいという意味なんや
・お前がお前やと思うお前が、そのお前だけが、お前やねん。
お前が決めていいねん。
…
書ききれない程素敵な言葉が詰まっている作品でした。道に迷った時に何度でも読み返したくなるようなそんな愛読書になりそうです。
🚩4/2-4/6 読書期間
『犯罪者 上巻』
太田愛さん
太田さんは幻夏に引き続いて2作品目になります。
上・下巻なのでまだまだ先は長いです。
深大寺駅で見知らぬ誰かと待ち合わせをした5人は通り魔殺人に遭遇します。
4人は命を落とし、1人は命拾いをします。その1人が修司でした。
犯人は目出し帽をかぶり全身エナメル質で黒ずくめの男という情報しかありませんでしたが、その身なりをした男がヤク中で捕まりましたが、その男は既に命はありませんでした。
修司はその後も何者かに追われていました。
その為、知人の鑓水の元へ身を隠します。
作品からメルトフェイス症候群という病名が出てきます。
そして今回の事件のキーワードであるタイタスフーズがサンプルで保育園に配布したベビーフード。
これが事件に関係してるのではないかという所で上巻は終了します。
直ぐに下巻を読みたくなりました。
幻夏もそうでしたが、修司ばかりが酷い目にあっていてなんだか可愛いそうです。
*印象に残った言葉
・人間は非説教者が反論したり周囲が止めようとしたりしない限り1人でそう長くは怒れない生き物だ。次第に語彙が尽き「そうだろ?」とか「なんでそんな事をしたんだ」などと相手に同意を求めたり質問をするなどしてコミニュケーションを図ろうとし始める。この段階に至れば説教者が酔っていない限り終わりは近い。
酔っ払いはこの過程を力尽きるまで何度でも最初から1人で繰り返すことが出来る。
下巻も楽しみです。
🚩3/29-4/1 読書期間
『朽ちないサクラ』
柚月裕子さん
柚月さんは『最後の証人』を読んだのをきっかけに好きになりました。
どんでん返しが堪らないんです。
今回読んだ作品はがっつり警察小説でした。
ストーカ事件で長岡愛梨が殺害された所から話は進みます。
しかし、愛梨の両親から被害届けが出ていましたが平中署は中々被害届けを受理しませんでした。
主人公の泉は警察学校の同期だった平中署の磯川から北海道旅行のお土産を貰った話を高校時代の友人千佳に話してました。
しかし、被害届けを受理しない間に平中署の連中が慰安旅行に行っていたことを泉は勘付いてしまいました。。千佳は記者だったので、絶対に口外ししないようにと念を押しました。
しかし、千佳に話した翌日…記事になっていたのです。
泉は千佳が口外しをしたことを千佳に問い質しました。しかし千佳ではないと千佳は言い張ります。
この事件には裏があると泉に告げた数日後に千佳は遺体で発見されます。
親友を失った泉は千佳の無念を晴らす為にこの事件を磯川と共に調べ始めます。
そこで明らかになるのは、恐ろしいものでした。ネタバレになるので書けませんが…
この作品のタイトルにあるサクラ。
意味が分かると怖いものです。
ありとあらゆるものを守る警察ですが、職務をまっとうする為にはどのような手段を使ってでも、行動を起こす事実に何ともいえない気持ちになりました。
最終章に入る前になんとなく変だなとは思っていたのですが…。
勧善懲悪を期待している方には向かない作品かもしれません。
個人的な意見ですが、あまりスッキリしない感じでした。
*印象に残った言葉
・人間は不満が溜まり自分を制御出来なくなると過ちをおかす。
・犠牲の中に治定があってはならない。
・薫風や蚕吐く糸にまみれつつ
渡辺水巴さんの俳句です。
物事を重く悪く捉えるのか良い風に捉えるのかは受取る人次第で、重く捉えれば精神も病んでしまい、新しいものは何も見えませんが、薫風の中に置いてみることで新しいものも見えてくるのではないかという意味のものだそうです。
泉の今後の活躍を祈るばかりです。